建築単価の上昇により生まれるギャップ

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新築の建築単価上昇がとんでもない状況にあるようですね。

建築単価とは、延べ床面積1m2あたり(または一坪あたり)の建物
の原価を表す単語です。

 

昨今の円安や物価上昇、消費税増税などから、建築単価もずいぶん
上昇をするのだろうなと思っておりましたが、予想以上の価格上昇
が現実のものとなっているようです。

健美家さんのコラムにおいて、赤鬼荘の著者である渡辺よしゆき氏
が最近新築を建てた件を書かれていましたが、重量鉄骨マンション
で坪単価95万円となったそうです。

1m2あたり約30万円。

 

あまりにも高い状況に、今後の日本の不動産市場はどうなるのか、
予想がつかない状況にあります。

建築単価の上昇は投資意欲を鈍らせますね。

評価額と家賃のギャップ

何が問題であるかというと、ギャップ、です。

 

建築単価の上昇は致し方ないでしょう。円安や新興国の賃金上昇に
よる原料の輸入価格上昇、工事現場の人手不足による人件費の上昇、
昨今の耐震基準の引き締め、など。

価格上昇する理由はいくらでもあります。

 

問題となるギャップの一つ目は、賃料の上昇が追いつかないこと。

好立地の商業ビルはまだしも、住宅向けとなるとまだまだ賃上げを
迫れる状況にはありません。

平均的な家賃が上昇していくのは賃金が十分に上昇した後になる。
手持ちのお金に十分な余裕ができない限り、高いお金を出して良い
ところに住みたいとは思わないでしょう。

ボーナスの増額で引っ越そうとはなかなか思わないでしょうから、
家賃の上昇は基本給など月々の賃金上昇がキーになります。

となると、ベアが重要になるのですが……残念ながら春闘は一年
に一度しかありません。

 

最近まで、実質賃金が十数ヶ月連続で下落、と毎月報道をされて
いたのを見聞きした方は多いのではないでしょうか。

あれは『前年同期比』で比べていました。

消費税増税がある時点を境に施行されたのですから物価差がある
のは当然であり、賃金の上昇は年一回ですので前年同期比と比べ
1年間下回り続けるのも当たり前。

消費税増税により生まれたギャップが埋まるのに丸1年掛かるのは
仕方ないでしょう。

 

不動産の賃料は、これと同じジレンマを抱えさせられてしまって
います。

住宅のために掛けるお金は、家計の消費の中でも優先度が低い
現時点で満足していれば、よほどの理由が無い限りは高いお金を
払ってまでわざわざ引っ越したりはしません。

引越しのタイミングは転勤であるとか、新生活ですね。

 

そしてこのタイミングで賃金が上昇していなければ、十分な余裕
が無ければ、良い住まいにお金を出そうとは思わないのではない
でしょうか。

これが、不動産価格と家賃の間にギャップを生んでいます。解消
されるには、まだ当分時間がかかりそうです。

 

ですが、実は家賃のギャップは、経営者の努力でなんとでもなる
余地がありますのでまだマシなほう。

それよりも深刻な問題があると感じます。

 

知らないうちに債務超過となる時代

それは、金融機関の評価額とのギャップ、です。

金融機関は収益不動産の融資を打診された際に、必ず担保評価等
細かく評価をするのはご存知だと思います。

金融機関ごとに独自のルールがあり、それに基づいて評価します。

 

ですが、金融機関は不動産のプロではありません。細かい変動に
ついては考慮をしないのも稀ではありません。

担当者の能力差などもありますし。

 

その評価を原価法(積算評価)で行うことは少なくありません。
いえ、むしろ今でも原価法を基本としている方が多い。

さて、原価法において建物の評価額を決める際には構造に応じた
再調達価格をベースに検討します。

例えば重量鉄骨造の再調達価格はm2あたり17万円程度が一般的。

 

冒頭の話では、重量鉄骨マンションのm2単価は約30万円。

このギャップを、どう考えますか?

 

本来なら物価の変動とともに再調達価格も変動させて評価をする
べきだろうとは思うのですが、それをするには調査費用など多額
の負担を金融機関が負わなければならず。

そうしょっちゅう規定を変えるのは現実的ではありません。

そんな状況が続くうちに、「こういうものなんだ」との固定観念
が根付いてしまって、時代の変化に取り残されたルールとなる。

 

時代の変化で生まれたギャップが、私たち投資家に与える影響は
決して小さくありません。

下手をすると、いつの間にか「債務超過状態にある」との評価
金融機関からされていたりする可能性も。

債務超過であると判断されるのは不動産投資で最悪の状況の一つ。
借り換えもできず、新規物件も購入できず、せっかくの不動産を
手放す羽目になるかもしれません。

 

ギャップをうまく利用する

政府が2015年度中に、中古不動産の評価法マニュアル改正を推進
していることは、これまでも何度か触れてきました。

改正マニュアルが広く浸透すれば、このギャップも徐々に埋って
いくと思われます。

が、全国の金融機関、および担当者レベルで浸透するには相当の
年月が必要なのではないかと感じます。

 

ギャップが発生している時は慎重に判断をしなければいけません。

古い思い込みで大きな損失を出す例なんてそこら中にあります。

 

逆に正しくギャップを理解し、利用すれば大きなチャンスを掴む
こともできます。

投資の利益は、市場評価と本来の評価のギャップを利用したもの
から生まれるのですから。

 

目の前にあるギャップを、リスクと取るか、チャンスと取るか。
よく検討し、決断して下さい。

 

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  5. 木造物件の耐震性が問われています。
  1. 勉強になります。建物過大評価による債務超過。。。いま、投資を行っているサラリーマン大家の方ってそうなられてる方多そうですね。。。

      • きりのき
      • 2015年 4月23日

      実際、不動産鑑定士に評価をお願いしたりすると、建物の評価額は
      我々が思っているよりかなり低めに見積もられている気がします。

      金融機関なんてある程度以上古いとゼロ査定、なんて話も珍しくは
      ありませんね。評価方法を変えるなりの工夫が必要になります。

      購入時に減価償却を多く取れるよう建物比率をできる限り上げる、
      というのはいいと思うのですが。

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