不動産の売却、出口戦略が重要視される理由

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不動産投資において、購入後ある程度の期間で売却をした方がよい、と
言われるのが何故か、理解されているでしょうか。

それは、より加速度的に資産を増やすため、です。

 

売却をすると、単純に考えればキャッシュフローを失いますので利益を
得る手段がなくなり、資産の増加がストップします。

資産を増やすチャンスを失ってしまう。経営が上手くいっているのなら
売却する必要は無いのではないか。

そう考える人は少なくないかもしれません。

 

実際、それは一つの真理でもあって。高い収益率を得られている物件は
必ずしも手放す必要はない、と僕も思っています。

しかしやりようによって、ただ物件を持ち続けるよりもずっと多く利益
を得られる場合があります。

それが、売却です。

物件が値上がりすればキャピタルゲインが得られるから売却をすべきだ
との主張は、ちょっと間が抜けています。

日本においては不動産価格は経年劣化によって下落するのが一般的です。
今の一部の都市部不動産のように不動産価格が上昇を続けているような
状況はむしろ特殊であって。

不動産価格の上昇によるキャピタルゲイン狙いの戦略は、淡く儚い夢に
過ぎません。現実的ではない。

 

ではなぜ売却が資産増加に寄与するのか。

それは、日本の税制がポイントになります。

これだけ建物がありますから、物件も売買されて然るべきですね。

減価償却と売却価格の間にある歪み

不動産所得は総合課税制度が適用されているため、高所得者にとっては
実のところあまり嬉しくない収入です。

いくら稼ぎを増やしても、その大半が税金として召し上げられてしまう。
そのために、高所得者にとって税金対策は不可欠です。

そこで、減価償却費をなるべく大きく計上しようとする動きが出ます。
減価償却費については今更説明は不要でしょうか?

 

なぜ減価償却費を大きく計上しようとするか。

早く償却を行ったとしても減価償却の総額が大きくなったりはしません。
将来的に償却できる金額が減ってしまうため、むしろ総合的には納税額
が増えてしまう可能性の方が高い。

総合課税制度が累進課税である以上、できるだけ高い所得を維持して、
その範囲で減価償却を行うのが一番節税額が増えるからです。

 

にもかかわらず、減価償却費を早く計上しようとする人は多い。

中にはたまたま今年は収入が多いから多く計上したい、来年以降の収入
は大きく下落するから問題ない、との計算の方もいるかもしれません。

しかし、サラリーマンが不動産投資をするとの条件に限れば、年間収入
が大きく変動する要素は無く、減価償却費を早期に大きく取る必要性は
ないように見えます。

 

その理由が、売却。

不動産の売却益には、短期譲渡税もしくは長期譲渡税のどちらかが適用
されます。前者は合計で39%、後者は20%です(復興特別所得税除く)。

どちらが適用されるにしても、総合課税における最高税率近辺の税率を
下回っていますね。所得税は所得が900万円を上回った部分は33%以上で、
そこに住民税10%を加えると43%にもなります。

 

減価償却を大きく取る事で安くなった税額が、売却益に課せられる税額
を上回れば、手元に残るお金を増やせると思いませんか?

譲渡税が低く抑えられている税制がそれを可能としています。減価償却
が進んだからといって、実際の売買価格が下がる訳ではありませんから。

減価償却が早く進むとそれだけ売却益が増え、課税対象額が増えますが、
その分だけ所得税が抑制されていますので税率が低くなった分だけ手元
に残る資金が増える、という仕組みです。

 

この仕組みは、付帯設備部分の按分により可能となっています。

建物部分の償却期間は売買時の築年数から計算されるためいじれません
が、購入時の建物価格の一部を付帯設備として按分し、減価償却期間を
短く設定する事で、早期償却を可能とします。

逆に言えば付帯設備の償却期間を過ぎると計上される減価償却費が急減
しますので、対策を打たなければそれ以降は納税額が増加してしまう。

その対策こそが売却であり総合的な納税額の圧縮に繋がり、資産の増加
速度を向上させる鍵な訳です。

 

トレンドを読みながら

ただし、万能ではありません。

最初に書いたように、売却によりキャッシュフローは減ってしまいます
ので次の物件を購入して補填をしなければいけません。

すぐに新たな好条件の物件が見つかるとは限らず、1棟しか所有をして
いない場合は長期間無収入となってしまう可能性がある。

特に不動産価格が上昇し、利回りが低下していて、今後も同様の傾向が
続くだろうと予測される現時点では売却により稼ぎが減ってしまうかも
しれません。

 

複数の物件を既に所有していて1棟を売却してもキャッシュフローが十分
得られる、次の物件を有利な状況で購入できるとか、売却で得たお金を
不動産とは別の投資に移すつもりだといった状況であればいいのですが。

そうでない場合は、売却にさほどの旨みはないでしょう。

 

それでも、早いうちに手元資金を増やして規模を拡大したいとか、所得
の分散やリタイア予定などで総所得が抑えられる見込みであるといった
理由があれば、早期償却にはメリットがありますので。

積極的に売却を検討していない場合でも、付帯設備按分による早期償却
をするのは悪くないと思います。突然売却せざるを得なくなる事態へと
巻き込まれないとも限りませんし。

また思ったより売価が下落してしまった際にも早めに減価償却が進んで
いると無駄な損失を出さずに済みますね。売却損は譲渡所得以外と損益
通算することはできません。

 

考え方次第ではありますが、物件を購入後遅くとも最初の確定申告まで
には決めなければいけない話ですので。

将来を見越してどうするか、明確に答えを出しておいて下さい。

尚、実行には必ず専門家と相談をして下さい。無茶苦茶なことをすると、
税務署に否認され脱税であると指摘される可能性がありますので。

 

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