医療費と地方格差

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今回は趣向を変えて、医療費のお話。

日本国内において『医療費の高騰』が大きな問題として提起されて
いるのはどなたもご存知かと思います。

僕の考えとしては、日本の医療費は全く高いものではなく、むしろ
安い方であり、質に関しても費用からすると相当に高レベルの医療
が提供されている、との立場でいます。

事実、日本の医療費は40兆円程度、人口が2.5倍程度のアメリカの
医療費が200兆円超であるのを考慮すれば一目瞭然です。高齢化率
まで勘案すれば、金額以上の差がそこにはあります。

 

もちろん財源が健康保険料や公費負担の割合が大きいため、公平を
保つためにある程度の抑制が図られなければいけないのは確かです。

が、質の高い医療の提供は人間の幸福に必要なものである事、及び
質の高い医療の提供にお金が掛かるのは仕方ない事で、経済に余裕
があるならより増やしていかなければならないとも思います。

現在は日本経済全体が停滞している時期ですので横ばいが妥当とは
感じるものの、高齢化による需要増もそのまま受け止めるべきで、
少なくとも人件費に関わる部分の単価削減は問題があるでしょう。

 

医療費の単価である「診療報酬」の改訂が近づくたびに、報道では
毎回、医師の給与に当たる本体部分、などと流して、「医師は給料
が高すぎるから削減をしよう」とのキャンペーンが張られます。

政府やマスコミにとっては、国民のヘイトを逸らしやすい存在なの
でしょうね、医師というのは。

 

一つ訂正をしておくと、診療報酬の本体部分の一部は確かに医師の
給与にもなっていますが、他にも看護師、薬剤師、放射線技師など
の専門職から一般事務職まで全ての労働者への賃金の源泉です。

病院運営の経費にも当然充てられています。電気代や水道代なども
当然ここから。加えて新しい機器や設備の導入費用等もこちらから
捻出する必要があり。

医師の給与に当たる、という言葉は完全なミスリードであり、報酬
の単価削減は最終的に提供される医療の質の低下へと繋がります。
その辺りをご理解の上、ご判断を。

 

診療報酬のマイナス改定は、政府の掲げる賃金上昇と完全に矛盾を
した方向性である点についてもまたご注意下さい。

診療報酬マイナス改定は、医師の給与よりもその他職種の給与へと
直撃するだろう事は間違いないです。

日本の医療環境は相当に圧迫されています。

標準医療の地域格差

問題があるとしたら「偏り」であって、社会の趨勢や要望に合わせ
偏りを改善していくのは政府の重要な役割です。

ただし、残念ながら政治家や官僚は医療の実際をよく分かってない
人が大半で、最も重要なはずの「予防」に予算をなかなか割いては
くれなかったりで、その点は僕が一番不満に感じるところ。

いっそのこと、選挙で争点化してもいいくらいだと思います、今後
の医療の在り方について。

 

そんな、予防医療やその他の治療などの偏りにも予算振り分け上の
問題があるのは確かなのですが。

日本の医療において最も大きな問題は、地方格差であると僕は確信
をしています。

 

僕も地方で診療に従事しておりますが、ちょっと稀な疾患になると
途端に近くにはどこにも紹介先が無い、なんて事態になります。

時には全く稀ではない、一般的な骨折などでも入院先が近隣に無い
なんて普通に起こります。救急車で高速道路に乗って一時間掛かる
病院まで搬送されたり。

その一時間の間に何か問題が起こったら、誰が責任を取ってくれる
のでしょうか。

もっとも、逆に都内などでは病院が多過ぎるため、また医療者側の
モチベーション低下のため救急を断ることが常態化してしまうなど
別の問題が発生していますが。

 

これらの、地方と都市では中身が違いますがどちらにおいても医療
の質の低下が起きていて、とりわけ根本的に解決しがたい地方格差
は重大だと感じます。

地方住まいというだけで、適切な医療を受けられない可能性がある
のですから。憲法で保証されている平等が担保されていません。

 

僕は少しでもそれが解消できればと地元での地域医療に尽力すべく
色々と計画を練っています。

が、それも予算不足の現実の前で、いったいどこまでできるものか。

大きな需要がそこにはあるのに予算が足りずに応えられないなんて、
これが営利企業であれば経営の失敗と株主から経営責任を問われて
仕方のない状況。

何とか打破をしていきたいところですが、現在の医療経済環境では
やれる事は限られているように感じます。

 

医療で地域に、国に活力を与えたい

実のところ、僕は医療にこれ程需要があるのだから、医療にはより
お金を掛けて経済活動の一環としてしまえばいいのではないか、と
考えます。

財源として流石に公的保険や公金に頼り切り、とはいきませんが、
公共事業と思って医療に予算をつけるのは、経済的にも過ちでない
のでは、と。

それこそ研究を含めた予防医療に力を入れれば、生産性の意味でも
何の問題もないでしょう。

使途を厳しく定めれば、悪用の心配もないはずです。厚生労働省は
遺骨収集事業で多額の使途不明金を出している余裕があるならば、
こうした制度の整備に力を入れて欲しいものです。

 

と、こんなところで声を上げても何の意味もなく、ただの現実逃避
でしかないのですけれども、僕は真面目にそう思います。

医療に携わる全ての職種は、より良い待遇の中、幸福を掴むべきで
あると考えています。

なかなか日本全体でそうはなってくれないでしょうが、少なくとも
僕が関わる周辺だけは少しでもそうなるよう、努力をしていこうと
書いていて改めて気が引き締まりました。

こちらが求めるものも、厳しくしなければなりませんけれどね。

 

尚、本気で共感を覚え、賛同してくれる人材は常に募集しています
ので、随時ご連絡下さい。宜しくお願い申し上げます。

 

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