内部留保の本質と本来の問題点【1】

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最近、内部留保という言葉が独り歩きし過ぎで、そのあまりの認識
の間違いによる誤解から、世間や政治が変な方向に向いてしまうの
ではないかと心配になります。

そもそも政治家からして理解しているのか怪しいですし。

 

内部留保というのは、大雑把に言えば企業保有の資産の事を示して
います。法人の内部に留保されている、という意味です。

財務諸表のどこを見ても、内部留保なんて単語は載っていません。
会計上は内部留保との言葉は使いませんから当然です。

あくまで法人の保有している資産総額を表しているだけですから、
それだけでは現状の問題点が全く見えてきません。

 

そこを理解していないから、企業が内部留保を増やしている、との
報道を聞いて、企業はカネを貯め込みすぎていて社員に還元しない
などけしからん、と綺麗にミスリードされてしまう。

果ては内部留保に課税するなどというトンデモ公約を掲げる政治家
が出現したり、内部留保を禁止、制限しろなんて事を言い出す人が
出てきて、世論は混乱していきます。

こういった勘違いやミスリードから発生した騒ぎは、最終的に誰も
間違いを認めないうちにうやむやとなり、何が問題であるかの焦点
すら掴めないまま埋没してしまって。

せっかくの改革のチャンスが失われてしまう。

 

公然と物事を批判したり意見をしたりするなら、まず正確な理解を
してからでなければ、自ら不利な場所に飛び込んでいくだけ。

この内部留保についてはあまりにも広く間違った理解が広がり過ぎ
ており、ちょっと是正をしておかなければ被害者が増えるかと思い
ましたので、ちょっと取り上げてみることとしました。

僕は複式簿記をしっかりと学んでいる訳ではありませんので会計上
のお話をするつもりはなく。

あくまで、社会問題としての内部留保についての正しい認識をして
いただくための内容ですので、ご了承ください。

施設だって立派な企業の資産、内部留保の一部です。

言葉の一人歩き

先程書いたように、内部留保とは法人の保有する資産を意味します。

報道では「円」で表現されますので、それだけの現金を抱えている
と勘違いをする人が最初の段階で大勢出てきますが、大間違いです。

財務諸表を読んで内部留保を算出すれば、日本企業の財務諸表は円
で表記されていますから、それをそのまま報道しているだけ。

 

ですが、企業の保有する資産とは現金だけではありませんよね。

企業の工場が建設されている土地。また、工場そのもの。これらも
れっきとした資産で、財務諸表にしっかりと記載されています。

それどころか、30万円以上するものは一括償却ができず資産として
しっかりと計上されています。

これらは企業の営利活動で得た収入から購入し法人の所有となって
おり、内部留保となります。減価償却が終わるまでは法人の資産と
扱われます。

 

まず、内部留保とは企業が保有している現金とイコールではない
という点を理解しておかなければいけません。

内部留保を貯め込んでいてけしからん、との意見を持っている方は
大体この時点で間違っていますね。

内部留保とは企業保有の現金総額を表しておりませんので、これを
賃金に回せというのは全く議論にならないんです。まさか、社内の
工場を質屋に出して給料を上げろというのではないでしょう。

 

要するに、企業の内部留保が増大しているとの問題を取り上げる際
には、まずその内部留保の中身がどうなっているのか、を調べない
といけません。

ちなみに、内部留保を設備投資に回して減らせ、なんて意見も時々
目にしますが、それもとんちんかんです。

内部留保のうちの現金を、法人の所有する設備への投資に回しても、
内部留保の額は変わりません。投資した設備が減価償却されていき
初めて減少します。

保有している現金を企業価値を高めるために投資しなさい、との話
なら理解できますが、そこに内部留保という単語が混ざってくると、
知っている人間からすると話をする気にもならなくなってしまう。

 

もしも賃金を増やそうとしない企業に対する意見を述べたい場合、
内部留保なんて言葉は封印した方が良いと思われます。

 

国の迷走が問題の根っこ

内部留保が増えると何が変わるかと言うと、企業の保有する資産が
増えた分だけ企業価値が上昇し、株価が上昇します。

これは自然な流れ。そもそも株式とは企業価値を表しているもので、
内部留保が増えれば株価は騰がるし、内部留保が減れば株価は下落
します。

 

ここで難しい問題です。確かに賃金を増やしたり配当を増やしたり
すれば企業内の現金は減り、その分だけ内部留保は減少します。

が、それは企業価値の下落、株価の下落に繋がります。

果たしてそれが経済に好影響かどうかは、バランスの問題となって
くるでしょう。

特に賃金は一度上げたらなかなか下げられませんから、企業の業績
は恒常的に悪化してしまいます。まだデフレから完全に脱却をして
もいない今、それを民間企業に主導しろとは酷な話

 

しかし労働者の資産が増えなければデフレは脱却できません。今の
政府や日銀、また多くの世論は企業へと責任を押し付けようとして
いますが、大間違いで。デフレ脱却は国の責任です。

賃金が上昇しなくとも労働者の資産が増えればいいわけですから、
本来であれば減税をすればいいのですが、そこを「日本の借金が」
との議論にぶつかり、八方塞がりとなっている。

本来減税すべきところを増税するなど、国は迷走しています。まあ
利権関連でそうなっているんでしょうね。政治家だけでなく各省庁
が絡んでいるので、最早どうしようもないのでしょう。

 

話が立て込んできましたが、長くなってきたので次回に続きます。

 

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