医療経済が厳しさを増している今、現場の医師はお金と向き合う定めにある【1】

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本来、医療者というのはあまりお金がどう、とかそういった話とは
縁の遠い存在であるべきではあるのですが。

時代の変遷で、様々な価値観にも変化が生じて。医療を取り巻いて
いる環境はお金と切って切り離せなくなりましたし、それとともに
医療者も以前より個人を重んじる価値観が強まってきました。

 

経済システムの一部としての医療は、お金の流動性を確保する為の
大きな一角としての役割があります。

もし医療予算を半分に縮小したらどうでしょうか。偏りは無視する
こととして、あらゆるモノの価格、賃金が半減するとしたら。

その影響は医療関連企業だけでなく、賃金減少からくる消費の減退
から広く経済に悪影響を及ぼすのは確実です。

 

一部の人は『老人の医療や介護なんて何も生み出さないものにお金
を使うなんてけしからん』などと主張されることがありますけれど、
経済の一角を担っているだけでも十分な社会的意義があって。

いえ正直な話、現代の仕事のあらゆるものは『経済を支える』のが
最重要項目の一つとなっており、合法的な存在である限りは、また
業界が自律されている限りは存在価値がある。

日本においては国民皆保険制度が導入されており、医療経済の規模
は国の支配下にありますので、それ以上の価値となることを目指す
ような真似はせず、予算の範囲で使命を果たすのが大事ですが。

医療制度が整備されていなかった時代よりも遥かに大きな価値提供
ができるようになり、医療経済規模は大きく拡大し、お金との関係
がより密接なものとなっていきました。

 

それとともに、扱うお金が大きくなるとともに、医療従事者もお金、
所得に対する意識を強め、医療に対する矜持偏重主義から個の利益
も同じくらい重視する価値観へと変化をしていっています。

今や医師だろうと看護師だろうと、医療者である以前にいち労働者
であり、また一人の人間である、との意識が根付いていますね。

多くの善良な医療者は目の前の患者、要介護者に対して可能な限り
手を尽くそうとの想いは持っているはずですが、自分を犠牲にして
まで何とかしようという範囲は狭まっているのが現実でしょう。

 

僕も一人の医師として、できる限りは努力したいと考えていますが、
肉体や精神を犠牲にしてはそれも叶いませんし、家族はより重要で
守らなければいけないとの気持ちを強く持っています。

特に経済的安定性を欠いていては医師としての使命を十分に果たす
のは難しい、所得と仕事のバランスの取れた人生を歩みたい、とは
感じてしまいますね。

医師たるもの、世間としてはより高潔な存在であって欲しい、との
世論は重々承知ですが、現状は僕という個の限界であるのだろうと
思われます。

厳しい現実と向き合わなければならない時が来ています。

恵まれた環境が目を曇らせた

世界各国との比較はともかくとして、日本国内において医師の賃金
は恵まれてはいます。労働の質や時間的束縛は無視しますが。

それは本来、医師にお金の心配をせず医療に従事してもらうために
設定された金額です。ですので、それ以上のものを求めずに仕事へ
従事するのが当然なのかもしれません。

そして多くの医師はそうしてきたのだと思います。恵まれた環境の
中、目の前の仕事に集中しつつ、プライベートでは高収入から普通
より少し贅沢な生活をしていて。

いつしかそれが当たり前のような錯覚を覚えてしまっていたのかも
しれません。

 

それは、多くの医師、及び周辺の人間に経済感覚の狂いを生じさせ
ました。

よく世間的には年収1000万円もあるとあたかも大金持ちであるかの
ように表現されますが、実際はどうでしょう。

平均的なサラリーマンに毛が生えた程度の存在でしかありません。
ちょっと教育に、ちょっと住宅に、ちょっと自家用車に費やす費用
を増やしたら、お金の余裕なんてなくなります。

社会の変化によりそれは加速していますね。例えば子供の教育費に
掛けるお金は、昔のそれと一線を画しています。

 

お金に困窮した医師が取る行動。なんでしょうか。

医師であったら、すぐに思い浮かぶかと思います。アルバイトです。

 

当直バイトなど、それなりの金額を限定された時間でも稼ぐことが
できる医師という職業は、やはり恵まれています。

ちょっと労働時間を増やせば生活の足しどころではないお金を得る
のは難しい話ではありません。

世の中の医学部人気はこういった安定して高収入であるイメージが
強く後押ししているのは間違いないでしょう。

 

ですがこの恵まれた労働環境が、実のところは不幸の始まりだった
のだろうと、僕は今になって思います。

 

目覚めの時?

労働さえすれば比較的高収入の立場が手に入る。この環境が、医師
のお金に対する意識を薄れさせ過ぎました。

経済はより一層、重要性を増し、生活に密着をしてきている中で、
医師は取り残されていってしまった。

 

医療経済がビジネスに取り込まれていく中、多くの医師はいい様に
扱われ、自分たちの価値が棄損されている事にすら気が付かず。

いつの間にか、経済的にも、個としても厳しい環境に追い込まれて
しまったんです。

 

ようやくそれに気が付く医師が増えてきました。僕もその一人です。

 

次回へと続きます。

 

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