連帯保証人制度は過去のもの? 進む金融制度改革【2】

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前回に続き、連帯保証人についてです。

 

金融検査マニュアルの改正により、保証人制度に大きなメスが入れられています。

先陣を切って日本政策金融公庫は保証人及び保証会社を融資に付けることを中止
したことが明らかになりました。

 

僕はこの制度改革を大きく評価しています。しばらくの間は融資を受けることが
できずに苦労することも多くなるとは思いますが、日銀の金融緩和が続いている
のに融資を出さないでいては金融機関が打撃を受けます。

金融機関としては、融資を出すしかない。

それは金融機関側の意識改革に繋がりますし、保証に頼りきった融資ではなく
成長が望める事業に対して融資をする力を金融機関は身につけざるを得ない。

長期的に考えると、明らかに融資は受けやすくなるでしょう。

 

そしてそれは経営者側にも影響が及びます。

しっかりした事業計画を立てて事業が成立することを証明できなければ融資を
受けられなくなりますから起業側としてもレベルアップしなければならずない。

また、怪しい不動産投資の誘いによく分からないまま乗り、買ってはいけない
収益不動産を購入する事例は大幅に減るでしょう。

不動産投資業界の健全化にもとても役に立ちます。

 

海外ではノンリコースローンが一般的で、個人が事業の保証をする方が珍しい。
日本が異質なんです。

もちろん日本特有の商習慣は悪いところだらけではありません。良いところも
たくさんあるから日本はこれほどの経済大国になりました。

製薬業界なんて外資が幅を利かせ始め、商習慣を破壊されてしまって下手すると
大量の失業者が出る可能性がある程です。

 

ですが、この融資に付随した保証人制度については、是正するべき部分である
と言えるでしょう。

一度の失敗で全てを失う、それが恐ろしくてやりたいことができない。

そんな世界は不幸です。

連帯保証人になってもらうために土下座までする時代は終わりを迎えるのでしょうか。

民間金融機関における保証人制度の現在

と、ここまで保証人制度について否定的な見解ばかり述べてきましたが。
それはあくまで将来的な話に過ぎません。

長い間、保証人制度に慣れきってしまった業界でいきなり保証人制度を完全に
撤廃することなどできないでしょう。

それこそ「貸し渋り」が大量発生し、お金が回らなくなってせっかく浮揚を
始めた日本経済が再度失速してしまう。

 

そこで金融検査マニュアルをもう一度読んでみると、あることに気が付きます。

保証人を付けないように、というのは「なるべく努力しなさい」となっている。

あくまで「なるべく保証人をつけないようにしなさい」と言っているだけで、
禁止しているわけではないことに注目して下さい。

 

日本政策金融公庫は政府系金融機関ですから、現政権の政策内容が色濃く反映
されます。むしろ日本政策金融公庫が政府の言っていることに逆らっていたら
ビックリです。

民間金融機関も金融庁の監視の目はありますのでわざわざ金融検査マニュアルを
改定してまで通達してきたことをないがしろにすることはできませんが。

努力目標である以上、そんな急に態度が変わることもありません。

 

事実、僕は5月に入ってからいくつかの金融機関の方とお話をさせて頂きましたが、
どこも口を揃えて「妻を保証人に」と言ってきました。

都銀でも、地銀でも。

金融検査マニュアルが改訂されて4ヶ月以上経過していますが、民間金融機関で
保証人のシステムが大幅に変わったかといえば、全くそうは感じません。

 

どこまで強制力が働くか、今後に注目

正直言って、金融機関にとってはこれまでのシステムでほとんど問題なく事業が
回っており、今になってそこを変更する意味が見出せていないのだと思います。

そもそも、金融機関にとってはメリットがありません。
保証人がいるのといないのとではいた方がいいに決まっています。

現場としても連帯保証人をつけるとの言い訳のもと、少し厳しい気がするような
案件でも本部を説得することができていたという事情もある。

今更いきなり保証人をつけるなと言われても、なかなか難しいでしょう。

 

努力目標のままであれば、自分たちの身を危険に晒してまでマニュアルに従おう
とは決してしないであろうことは容易にそうぞうできます。

何十年と続いてきたシステムを短期間で変えられるはずがない。

 

金融検査マニュアルの変更も、まだ前振りの段階に近い。

ここから徐々に文言を強めていくか、それともトーンダウンしていくかで、
国の本気度がどの程度であるのか見極めることができると思います。

 

今後どのようになっていくかを測るメルクマールとして、日本政策金融公庫が
役に立ちそうですね。

保証人も保障会社も付けなくなって、どの程度まで積極的に収益不動産へ
融資をしてくれるのか。

それとも時間が経つごとに保証人を再度要求するように戻っていくのか。

この辺りはしっかりと観察をしていきたいところです。

 

結論として、確かに保証人制度を無くそうとの動きはあり、一部表に出てきて
いる部分もありますが、その動きはまだまだ民間金融機関までは広がっていない。

従来通りの戦略で問題ないと思われます。

ただし、保証人を付けることなしに今まで通りの融資を受けることができれば
とてもすばらしい事ですから、それについては今後に期待をしましょう、と。

是非とも全ての事業性融資がノンリコースローンとなって欲しいですね。

 

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