事業では繰り上げ返済よりも内部留保の確保をまず優先すべき

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多額の融資を抱えていると、庶民的な感覚からすれば繰り上げ返済
を行って少しでも融資残高を減らしたい、との気持ちが沸きます。

金額もさることながら、早いところ返済義務を終わらせたい、との
思いは僕も良く分かります。

不動産投資なんて、融資返済が終わって家賃収入から経費を除いた
全額が手元に残るとすればそれだけで生きるには困りません。破綻
リスクもほぼゼロ。

ノーリスクハイリターンの夢が実現します。

 

ですがそれは間違った考えであると言わざるを得ません。間違った、
というよりは単純化しすぎている、と言いましょうか。

1億円の融資を受けて1億円の返済を終わらせるには、1億円を稼ぐ
必要があります。1億円を稼げるのであれば、繰り上げ返済なんて
しなくてもその時点でノーリスクです。

繰り上げ返済をするとそれだけ手元の資金が手薄になって、経営上
のリスクが増大します。毎月の返済額を軽減するように繰り上げる
なら少しは収支が改善しますのでまだマシですが。

繰り上げ返済の効率を上げようと、融資期間短縮型の繰上げ返済を
すると、収支は変わらないまま、金利負担が減るため納税額が増え、
完済に至るまではリスクがかえって高まるケースがあったりします。

住宅ローンのように受けた融資から利益を生まないような個人向け
融資はなるべく繰り上げ返済をしてしまっていいと思います。

別に経費も突然必要になったりはしませんし。余裕ができた分だけ
返済に回すのは、リスクを減らしこそすれど増やしたりはしない。

 

しかし事業用となるとそうはいきません。繰り上げ返済のメリット
は個人向けに比べて減少し、デメリットが発生します。

手持ち資金(内部留保)の少なさは、ビジネスでのリスクを大きく
引き上げます。それこそ融資残高の大小など比較にならないほどに。

融資残高に見合った資産があれば、繰上げ返済をするよりもまずは
内部留保の拡大に努めるべきです。融資残高の圧縮なんていつでも
できるのですから。

 

融資が残っていても資金が増えれば、資産は拡大します。が、融資
を減らすと資産も減ってしまう。事業をする上で忘れてはならない
考え方です。

大事なのは融資残高の大小ではなく、資産の内容のバランスである
事をしっかりと認識して下さい。

お金を使うばかりが能ではありません。

繰り上げ返済で総資本は縮小する

バランスシートを見てみると、繰上げ返済をすると良いとばかりは
言えないのがはっきり分かると思います。

融資は、バランスシートの右側、総資本の部ですね。現金は左側の
資産の部になります。

融資は流動負債である短期融資か、固定負債である長期融資に分類
されます。

 

繰り上げ返済をする、というのはどういうことかというと。

資産である現金を減らして、流動負債もしくは固定負債を縮小する
との行為。

要するに、バランスシートとしては縮小する訳です。これは会社の
規模が小さくなるのと同じ話。

会社の規模は大きければ大きいほど良い、なんて昭和の時代の考え
ではありませんのでそれ自体が悪いとの主張ではないです。小さな
政府との考えは昔から存在しますし。

『時と場合によって』繰り上げ返済が悪影響を及ぼす可能性もある、
と理解をして頂ければと思います。

 

新たな融資を受けたい状況になった際に、融資残高が多くても現金
が豊富ならば融資を受けられ、逆に多少融資残高が少なくても現金
も少ないと融資が承認されないケースがあったりします。

繰り上げ返済を積極的に進めた場合、後者のような状況がないとは
言えません。しっかりと信用が積み上げられていれば普通は問題に
ならないように思われますが、環境次第では予測できません。

今のような金融緩和がされている時代から、金融引き締めの時代に
突入したらどうなることか。

大抵の場合、融資残高の圧縮よりも内部留保の増大を優先させた方
が低リスクであったりします。

 

収支の改善の必要性に応じて

では繰り上げ返済から得られるメリットとは何か、ですが。

収支の改善、ただひとつであると僕は考えています。

 

経営上、融資の返済が資金のやり繰りをする上で大きな課題である
のは誰しも感じていると思います。

返済負担を大きく減らすためには、繰上げ返済をして全体を圧縮し
月々の返済額を軽減するか、融資期間を引き延ばしてもらうか、の
どちらかしかありません。

そして、融資期間の延長はかなりハードルが高い上、金融機関から
の信用を毀損しかねない。

 

何らかの理由で収入が減ってしまい、毎月の返済負担が重く経営に
支障が出てしまった。そんな場合、資産を売却したり、手持ち資金
を投じて融資を減らし、身を軽くする。

それが事業における繰り上げ返済の最大の動機です。

 

後は、事業が大変うまくいっていて、無借金経営を是とするならば
余裕資金から積極的な繰上げ返済を実行するくらいでしょうか。

その他で繰り上げ返済をする意味合いは、あまりないと思います。
極端に金利が高い融資を減らす、くらいでしょうか。その場合も、
繰り上げ返済より借り換えが優先されるように思います。

 

せっかく大規模な金融緩和によりかつてないほどの低金利で融資を
受けられるのですから、せっかく受けられ融資を圧縮する必要性は
あまりないのではないでしょうか。

金利が上がる兆候があったらその時に手元資金を返済に充てるでも
遅くありません。

余裕資金がもったいないと感じるならば、繰上げ返済よりもその他
の投資に資金注入をした方が資金効率はずっと良い。

 

どう考えるかは個々の好みもありますので絶対の正解はありません
が、僕はこんな考えです。

 

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  1. ただ、違う投資案件がなく、現金を遊ばせておくのであれば、返済額減少型での返済で収支が改善し、総支払額も減るので、僕は繰上返済はやり方次第かと思います。

      • きりのき
      • 2016年 6月9日

      ありがとうございます。勿論その通りで、記事内でも
      バランスが重要であるとの内容でお書きしました。

      焦り過ぎないようにするのが重要ですね。あと、余裕
      があって繰上げをするなら、できれば期間短縮型として
      金利支払い総額を圧縮することをお勧めしたいです。

      負担減少型は先々の収入に不安を感じた時、要するに
      余裕がなくなりそうな予感がする時にするのがいいの
      ではないかな、と。

      そのようなところまで含めてバランス取りですね。

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